『扶氏医戒之略』は、ドイツ人医師フーフェランド(1764〜1836)が書いた「医戒の大要」を、緒方洪庵が日本語に抄訳して12項目にまとめたものです。
医者である緒方洪庵(1810~1863)が天保9年(1838)に大阪の船場に開いた適塾には、青雲の志を抱いた青年が全国より集い、文字通り同じ釜の飯を食いながら切磋琢磨をし、彼らは後に近代日本の礎となったのです(歴代塾生は数百名、福沢諭吉、橋本左内、大鳥圭介、大村益次郎、佐野常民等々綺羅星の如し)。
その当時は塾生達がたった一冊の蘭和辞書を文字通り奪い合いながら、昼夜を問わず勉学に励んでいたのです。インターネットであらゆる情報にアクセスできる現代と比較したら、辞書がたったの一冊しかないなんて、なんと貧弱な環境であることか…しかし、人間の大きさを比較してみたら、私などは彼ら塾生からしたら芥子粒ほどの大きさもないでしょう。
大切なのは、環境ではなく「志」である。
8年程前に大阪の適塾を見学した私は、彼らに平手打ちを食らったような衝撃を受け、彼らが口角泡を飛ばして議論をした広間の中でそのまましばらく佇み、「当時の彼らの刻苦勉励を思えば、自身の境遇は何するものぞ」と思いを新たにし、『扶氏医戒之略』複製一帖を求めて適塾を後にしたのです。
そうして今の自分がいます。
偉大な人物の功績を、教えを後世に伝え継いでいきたい…という思いで、私はこうした文画を作成しています。
文フリ大阪で、この作品を展示します。
9月26日、会場は大阪のOMM展示ホール、お近くの方のお越しをお待ちしてます。